「朝鮮への人道支援 グローバルな平和創造の過程」

著者:Hong Yang-ho
翻訳者:上野さとし(satosi@aqr.calmnet.ne.jp)

はじめに

朝鮮は6年間に渡って国際社会から前例にない長期の人道支援を受けてきた。 その支援元は多様であり、国連、国際組織、韓国やアメリカ、日本、中国、ヨー ロッパ諸国などの国家、韓国NGO、国際NGOにわたる。更に支援の範囲も包括的で、 食糧支援、農業・森林復興、家畜や公衆衛生の支援、教育などである。

この文章では近年の人道支援をめぐる状況を概観する。援助の過程で表面化した 問題を理解することで、さらなる支援へつなぎたい。

朝鮮への人道支援の始まり

朝鮮への人道支援は早くも1990年には始まった。例えば同年7月に韓国宗教界 が米支援を行い、1991年には医薬品を送る動きがあった。1995年6月から10月に は、朝鮮との協定に基づいて韓国政府が15万トンの米を提供した。さらに 1990年以降5年間にわたり国連児童基金(UNICEF)は毎年100万ドルを支援してい た。

しかし支援が本格的に始まったのは、洪水に見舞われた朝鮮が国連人道支援局 (UNDHA)に緊急支援を要請した1995年8月からである。同時に朝鮮は世界保健機 関(WHO)には医療団の派遣を、UNICEFには5万ドル相当の大豆を要請した。

朝鮮の悲惨な状況と国連機関の人道支援の推進が、韓国を始めとする各国を人 道支援へと奮い立たせることになった。

人道支援の裏にある動機と朝鮮の姿勢

人道支援の支援元は国連機関、NGO、国家の3種類に分けられる。国連機関と NGOの食糧支援の目的は純粋に人道的なものだが、国家による支援は、善意の名 目でなされているものの、実際には政治上・外交上・安保上の問題を解決するた めに行われている。

さらにいえば、国連やNGOも、純粋に人道主義的な動機だからといって、活動に ガイドラインがあるわけではない。国連機関の方は、朝鮮への人道支援に関し ては、支援を人道目的に沿ったものにするため、1998年に定められた人道主義原 則を忠実に守っている。この原則は人道支援に対し以下の指針を定めている。

  1. 需要見積もりに沿った全般的な人道的状況を把握していること
  2. 最も必要とする階層に支援が届くことを確保すること
  3. 見積もり・モニタリング・活動評価へのアクセス
  4. アクセスが許可されている地域のみに配給すること
  5. 人民の人道的利益を保護すること
  6. 地域の生産能力造成を支援すること
  7. 計画の策定および実施に、受益者が参加すること
  8. 充分な数の国際スタッフ
  9. 国際人道機関が必要とする衛生・安全レベルに達していること

朝鮮はこの原則を国家主権の侵害と考え、そのため国連機関は朝鮮に厳重に 警告された。時には政府は断固として国連機関の要請を拒絶した。にもかかわら ず、粘り強い努力の結果、国連機関とNGOは在留スタッフを増やし、対象地域を 拡大し、社会調査を行い、受益者の参加も確保できた。

1996年には朝鮮に派遣された国際機関の人道支援スタッフはたった30人だった のが、現在では100人に近い。そのうち44人が世界食糧計画(WFP)のスタッフであ る。朝鮮全国にある211の市・郡のうち、WFPは167にモニタリングの為に立ち 入っており、毎月平均300回のモニタリングを行っている。さらに、WFPはモニタ リングできない地域には支援していない。これまでのモニタリングは第一に援助 の量に関するものだったが、それを質的評価に変えていくことを、朝鮮の洪水 被害復興委員会(FDRC)とWFPは合意に達するところである。

食糧農業機関(FAO)とWFPは毎年収穫量の調査を共同で行っている。1998年には UNICEFとWFP、EUが朝鮮の公衆衛生省と協力して、7才以下の子どもの栄養状態 を調査した。現在はWFPと国連機関、国際NGOが約800万人に支援している。託児 所や幼稚園、小児科病棟の子ども、孤児、妊婦、育児中の女性、高齢者、洪水の 被害者が人道支援の第一の受益者である。

支援団体に対する朝鮮の厳格な態度

モニタリングを諜報ではないかと疑って、朝鮮政府は援助団体のモニタリング を当初は制限した。また重要軍事地域での支援活動や、朝鮮語の流暢な国際組織 の職員が在留スタッフとして働くことを禁じた。

現在も朝鮮政府はこうした厳格さを持ち続けている。モニタリングを行うのに 許可を得なければならないし、さらに朝鮮政府の職員の監視のもと、予定され た地域で予定された時間でのみ許される。付き添い無く予定された地域以外に立 ち入ることは絶対に禁じられていた。国際機関やNGOの職員のコンタクト先は FDRCと公衆衛生省 に限られていた。さらに、国際機関からの緊急援助食糧は政 府の公式供給制度を通してのみ配給ができる。

こうした朝鮮政府による過度の制限のため、国境無き医師団(MSF)、オックス ファーム、反飢餓行動(ACF)などいくつかの国際NGOが支援計画を中止し、朝鮮 から引き揚げた。しかし、多くの国際機関とNGOは、政府による過度の制限を仕 方のないものとして受けいれ、交渉を続けることで改善する見込みを持ちつつ、 朝鮮との友好な関係を保っている。最近は朝鮮政府も外部からの援助が実際 に必要だということを認識しはじめ、国際機関やNGOの理解を得つつある。結果、 援助団体の需要により応えるようになっている。

国家主導の援助を政治的手段として利用する

国家主導の人道援助をする各国の目的や手段はさまざまである。アメリカの場合 は、人道援助は国連機関の要請により行われてきた。もしくはアメリカの安全保 障の拡大を見受けいれることと引き換えに、あるいは政治的駆け引きの結果とし て行われてきた。アメリカ政府はWFPや国連機関を通して援助をしている一方で、 アメリカベースのNGOを通じて直接援助を保っている。日本政府は国際社会の流 れを追って人道支援に参加したものの、それは特定の政治的条件とむすびついて いる。つまり、朝鮮在住の日本人妻の帰国や日朝正常化交渉などの日朝間の政 治問題である。なにより、日本政府は日本ベースのNGOではなく、国連機関を通 じて供与や信用の形で支援を提供している。

支援に対する韓国政府の動機は二つある。同じ朝鮮民族である仲間への義務であ り、なおかつ人道主義というジェスチャーである。一方で両国関係の改善のため の実際的な手段でもある。

援助の量と手段は様々である。たとえば、金泳三政権時代には人道主義と両国関 係のために15万トンの米が直接送られた。それ以来韓国政府は朝鮮を四者会談 などの国際社会に呼び出すための手段として、活発に援助する意図を明らかにし た。しかし、それは目に見える改善にはつながらなかった。結局、国連機関を通 じて1996年から1997年に間接的に行われた、小規模の緊急復興活動以外には直接 援助はされなくなった。

金大中政権も1998年初めに国連機関を通じて緊急食糧援助を行った。しかし同政 権は対北政策を変更し、直接援助による南北関係の改善を模索しはじめた。 1998年から1999年に北京で行われた南北副首相級会談で、韓国側は互恵主義の原 則に基づいて、肥料の提供と引き換えに離散家族再会などの課題を解決しようと した。こうした方法で韓国は南北関係に絡む問題の解決に人道支援を利用した。 さらに南北間の和解と協力を進める包容策としては、朝鮮への人道支援は便利 な道具となった。互恵主義の原則を柔軟に利用し、人道支援にあたっては韓国政 府は「先に与え、後で得る」という立場をとった。民間による人道支援活動の援 助にも歩を進めた。

同時に韓国は注意深く自らの利益を守った。援助物資が南にいる同胞から提供さ れたものであることを朝鮮の人々に知らせるため、また南へ向けられた彼らの 敵意を緩和して和解ムードをつくるため、韓国政府は自国の主要産品に国名をつ けて送ったのである。さらに物資配給の透明性を高めるため、軍事用には適さな い物品が選ばれた。

加えて、朝鮮に在留している国際赤十字委員会連盟(IFRC)の代表が配給に参加 した。適切に配給するように、朝鮮赤十字が配布作業を韓国赤十字に報告する か、NGOのメンバーが朝鮮に派遣され、作業の確認を行うかするようになった。

増える朝鮮の支援要請

近隣諸国が未解決の政治問題を解決するために支援を行っていることをはっきり と認識するに至り、朝鮮はこの状況を最大限に利用するようになっている。実 際、継続的な経済危機や食糧難に対応するため、外国からの支援を拡大しようと しているのである。以前とは違い、韓国の積極的な支援を求めて、支援量につい て事前に公式に提案しさえもする。

当初は韓国より自分達が優れているというプロパガンダのため、韓国から支援を 受けているという事実を市民に隠そうとしていた。そのため韓国の表示のついた 物資を拒否したり、配給前に表示を外したりしていた。入国申請は海外在住の朝 鮮民族か外国人に限られ、韓国NGOスタッフは却下された。朝鮮側の援助顧問 に関しては、朝鮮赤十字か、アジア太平洋平和委員会や国家和解評議会 (National Reconcilation Council)のような、韓国関係の問題を扱う労働党組織 に限られていた。

だが技術支援など韓国からの支援の質は向上し、また経済的苦難や食糧難が続い たせいもあって、韓国人は不可欠な存在になってきた。隠しとおすことが不可能 だと分かった朝鮮当局は、現在は韓国の表示がついたまま配給している。

さらに朝鮮は次第に多くの韓国NGOスタッフの入国を認めるようになった。 1998年に34人だったのが1999年には49人になり、2000年には144人、2001年12月 時点では344人まで増やされ、今もさらに増え続けている。結果朝鮮の人々は 韓国からの支援を知るようになり、韓国赤十字やNGOのスタッフに感謝を表すよ うになった。

支援が量的にも質的にも向上するにつれて、朝鮮の受益団体がより直接関わる ようになってきた。農業省や農学研究所、公衆衛生省、朝鮮医療協会、児童栄 養研究所などが現在は活動している。

朝鮮は必要に迫られて韓国政府やNGOの要請をより寛大に受け入れるようになっ てきている。しかしその厳格さはいまだ提供団体にとっては不満の種である。そ れは政治制度そのものに根ざしている。たとえば韓国赤十字からの物資の配給報 告は度々遅れるし、NGOスタッフの入国は国内事情などにより勝手に延期される。 以前と変わらず訪問地は制限されているし、朝鮮の当局者に付き添われている。 そのため支援を受けている地域をNGOスタッフが正確に調査することが難しくなっ ている。

朝鮮への人道支援の成果と展望

国際社会からの朝鮮への人道支援の総量は過去6年間で21億ドルに上る。この うち国連機関(韓国を一部含む)が約9億3000万ドル、国際NGO(韓国赤十字を含む )が1億4555万ドルである。各国政府からの支援では、韓国が約4億5000万ドルで、 他の全ての政府からの支援を合わせると計4億2700万ドルである。国際社会から の支援全体のうち、韓国からのものは28.6%である。主な支援国の中でも、直接 援助と国連機関を通じて行われたものを合わせれば、アメリカは5憶5500万ドル、 日本は2億5500万ドル、中国は2億1560万ドル、EUは1億8290万ドルとなる。

国連機関合同要請による年間支援額は表1のとおりである。7度の合同要請にもと づいて国際社会は合計9億8900万ドルを提供してきた。国連による合同要請に参 加した機関の中ではWFPの支援量がトップであり、支援の種類で見れば、食糧が 最も多い。

2001年の共同要請に応えられた支援の実際の内訳を見てみると、 FAO/UNOCHA(WFP信託基金、支援調整)が0.3%、UNFPA(緊急支援食糧)が0.2%、 WFP(緊急支援食糧)が82.3%、WHO(結核治療、医療機器の製造、公衆衛生システム、 伝染病予防など)が2.2%、NGO(栄養摂取、種芋の栽培その他)が1.9%となる。分野 別では、食糧が94.3%、栄養摂取が0.7%、教育が0.1%、支援調整が0.4%である。

国連機関の支援はこれまで主に緊急支援食糧の提供に絞られてきており、WFPが その主要機関であった。表2はWFPの食糧支援活動である。

表3は国際NGOによる人道支援活動である。最後に表4は韓国政府および韓国の民 間部門による支援である。

表1 朝鮮のための国連機関合同人道支援要請

単位:100万ドル
実施期間1995/9-1996/61996/7-1997/31997/4-1997/121998/1-1998/121999/1-1999/122000/1-2000/122001/1-2001/12
必要額20.3243.64184.39383.24292.08313.76383.98
支援額9.2734.70157.81215.87189.80152.63228.43
達成率45.6%79.5%85.6%56.3%65.0%48.6%59.5%
出典:http://www.reliefweb.int

表2 朝鮮へのWFP食糧支援

単位:100万ドル
期間1995/12-1996/51996/1-1997/31997/4-1998/31998/4-1999/61999/7-2000/122001/1-2001/10
量(トン)21、00070、000400、000600、000876、933733、834
価格(100万ドル)9.7625.9170.7345.8357.6219.75
受益者500、0001、600、0004、700、0006、700、0008、000、0008、000、000
出典:http://www.reliefweb.int

表3 国際NGOによる朝鮮への直接支援

単位:100万ドル
期間1995/1-1998/21998/3-1998/121999/1-1999/122000/1-2000/122001/1-2001/10合計
寄付額72.0117.6919.0815.7321.04145.55
出典:http://www.unikorea.go.kr

表4 韓国による支援

単位:100万ドル
1995199619971998199920002001合計
政府232.003.0526.6711.0028.2578.6370.07449.67
民間.251.5520.5620.8518.6335.1355.45152.42
合計232.254.6047.2331.8546.88113.76125.52602.09
出典:http://www.unikorea.go.kr

上昇傾向にある食糧支援

国際社会から朝鮮への人道支援の量については、以下の特徴が見られる。まず、 国連の合同要請の獲得目標額は上がっている。これは朝鮮の公共の福祉が改善 しておらず、いまだぜい弱だということである。一方で国連の人道支援の第一の 需給対象者として朝鮮は集中的に支援されてきた。

第二に、国連からの支援の主な分野は食糧供給であり、WFPの活動でも見たとお り、その量は毎年増えている。このことから、食糧供給に改善は見られないとい うことが明らかである。実際慢性的な食糧難を被っているのである。WFPの活動 が食糧支援に特に偏っているのは、アメリカや日本、韓国などから国連を通じて 送られる主な支援物資が食糧だからである。

第三に、国際社会からの近年の募金実績(実際の募金額/目標額)は下降傾向にあ る。これは目標額が上がっているせいもあるが、長引く人道支援に支援者が疲弊 してきたことが第一の原因である。

第四に、国際NGOと同様に各国からの直接支援も減少している。これは朝鮮に 政治的利害を持たない各国やNGOが関心を失いつつあるからである。一方で、課 題を達成できる運営能力のある国連機関によって直接援助は消化されてきた。

第五に、人道支援のうち72%はアメリカや韓国、日本、中国、EUなど政治的・外 交的、そして安全保障上の利害をもっている国からのものであり、これらの国か らの支援は朝鮮との二国間に抱えている問題を解決するためという意味がこめ られている。その結果、支援は国際NGOからの資金よりずっと上記の国の政府の 財政に依存している。

第六に、韓国に関しては、政府でも市民レベルでも支援量は増加しつづけている。 この上昇傾向は政治の観点から説明できる。つまり、同胞民族としての義務であ り、南北関係を改善する必要がある、ということである。

食糧中心の支援から開発復興計画への転換

朝鮮が支援を受けてきた7年以上の間、全体としての支援の目的も、提供され る物品も変化してきた。第一に、やはり食糧は主要品目ではあるものの、次第に 品目が多様化してきている。食用油や粉ミルク、砂糖などの緊急支援食糧のほか、 衣服や毛布、種子、肥料、除草剤、ビニールカバー、農具、家畜、医薬品、苗、 教材が含まれるようになった。

第二に、初期の食糧中心の支援から開発支援へと流れが変化している。UNDPは農 業と環境保護のための復興計画を推進している。1998年からは二毛作や林業の多 面化、植林などの計画を始めた。1997年から、朝鮮の要請により、農業復旧・ 環境保護(AREP)プログラムは、支援の種類を食糧から農業へと転換できるように するための、持続可能で大規模な開発計画を実施できるかを議論している。中期 の農業環境復旧事業によって穀物と野菜の収穫が充分にできれば、食糧支援の必 要は無くなるだろうとの見込みからである。

雇用創出事業の一環として、WFPは農業復旧や洪水被害の復旧作業、森林復元、 塩田や苗園、農道の復旧に着手している。この事業は支援の受給者に参加させる だけでなく、社会基盤の改善にもなる。1999年には37万7035人が68の雇用創出事 業に参加し、2000年には49万8480人が115の事業に、2001年には187の事業が予定 されている。

国際農業開発基金(IFAD)は穀物・家畜復旧計画とともに養蚕事業を進めている。 これに続いて、山岳地域の食糧供給を確保するための長期の農業融資計画を行う。 このIFADの融資事業は共同農場向けのものだが、無利子であるだけでなく、物資 での支払いも受け付ける。かわりにこれらの物資は農業開発事業のための融資に される。こうして事業は農業支援へとつながっていくのである。必要な農業用物 資や設備を得るのを助けるだけではない。個々人の農民に融資することで、人々 の生産する意欲を高め、集約化されていない農業地域の自立的な発展を支援する ことにもなる。

国際NGOはジャガイモ栽培事業の支援と同時に、種子・ビニールカバー・原料を 提供して肥料を製造するよう働きかけている。さらにWFPの韓国支部が現在手が けている開発復興事業には、朝鮮の風土に合った「スーパーコーン」を開発す る国際トウモロコシ財団との共同研究事業、韓国分かち合い運動によるジャガイ モ生産を増やす事業、ワールド・ビジョンが援助する水耕事業、浄土会(JTS)に よる農業技術支援事業、「良き隣人」(Good Neighbors)を通じた畜産業開発事業、 平和のための森(Forest for Peace)の樹木栽培復旧事業がある。

開発支援事業へと転換していくもう一つの側面として、技術援助が増えてきて、 人道支援活動を追い越しそうであるということがある。例としては、医療技術の 他、種子の改良、農業や畜産の技術的ノウハウの提供などがある。

食糧生産については、緊急援助食糧を配給するための食糧工場が地域レベルで継 続して建設されている。地域での強化ビスケットや混合食糧の生産を支援するた め、WFPは平壌その他の地域に18の食品加工場を建設した。韓国のNGOも地域の食 糧生産に参加しており、ワールド・ビジョンは平安南道の平原郡で6箇所の工場 を運営している。統一朝鮮仏教運動(One Korea Buddhist Movement,http://www.bubtanet.or.kr)は黄海北道の沙里院市で工場を開いた。 JTSは羅先市で子ども向け混合食糧の工場を運営しており、韓国福祉財団は学校 に配給するパン工場を平壌で開いている。

医療も、その重要性が認識され、増えつつある。当初の段階では医療支援は結核 治療の消耗品やワクチンに限られていたが、現在では病院の近代化や医薬品製造 事業などもある。WHOやUNICEFなどの機関は主に予防接種プログラムに携わって いる。ユージン・ベル財団は結核撲滅に力を入れており、韓国福祉財団は医薬品 工場を建設し病院を近代化する事業を行っている。

他には、余剰農産物や余剰食肉の寄付も増えてきている。最近では日本が米を提 供し、スイスとドイツが牛肉を、韓国が卵、果物、人参、海草を送った。余剰物 資の提供は、提供国の需給バランスをとるだけでなく、人道支援ができるように なるという意味でも良い傾向である。

NGOは地域の事業を始めるにあたってリーダー格になっている。アメリカベース のNGOの連合体であるInteractionやChildren's Aid Direct(CAD)、 Cooperazione e Sviluppo(CESVI)、Catholic Relief Services(CRS)、Mercy Corps International(MCI)、さらに韓国分かち合い運動やJTS、KADECO(南北間の 農業開発協力のためのNGO連合)などの韓国NGO、国際トウモロコシ連盟が地域事 業推進の立役者となっている。

人道支援の過程で浮上した問題

いくつかの問題が過去6年間の間、支援を提供する過程で浮上してきた。第一に、 粘り強い努力にもかかわらず、朝鮮の状況に改善はみられない。自然災害によ り引き起こされた一時的な危機である、と朝鮮は主張している。が、停滞経済 が早期に回復しない限りは解決しないだろう。食糧・エネルギー・外貨準備の不 足に対する解決を見いださない限りは、これからも被害を受けつづけるだろう。

さらに悪いことに、国連機関やNGOはそれぞれの目標募金高を達成できないでい る。この停滞は、長期にわたる支援活動により、支援者が疲弊しているためでも ある。この間WFP、WHO、IFAD、FAOなどの国連機関は韓国政府に協力を求めてき ている。しかしこの要請は韓国政府の政策と相容れるものではない。韓国政府は 南北関係を改善するために直接援助を利用しているのである。その上資金が不足 している韓国のNGOも政府に資金援助を求めているが、こうしたやり方は政府か ら独立した組織としてのNGOの精神そのものに反している。

加えて、これまではあまりに緊急食糧支援に偏りすぎていた。しかしそれでは食 糧難に長期的に対応することができない。現在の支援体制を、開発事業や農業復 興に集中させたものに移行する必要がある。しかし開発事業に必要な資金が不足 しているため、この分野はかなり遅れている。国連がバックアップする開発協力 事業が現在多様な分野で進んでいるが、それでもまだ初期の段階であり、規模も 小さいものに限られている。

もう一つの問題は、食糧難に焦点を当てすぎていたかもしれない、ということで ある。朝鮮が陥っている苦境は様々な要素から来ている。食糧難と医薬品の不 足による栄養失調、衛生的な飲料水の不足、不充分な医療・衛生設備などである。 朝鮮政府は食糧難に強い関心を示してきたが、それ以外には目を向けなかった。 それ故、そういった分野への支援は不足し、食糧以外の基本的な問題は見過ごさ れ、朝鮮の人々の基本的な生活条件の改善は見られない。

正確な統計資料が足りないため、特に医療や衛生、飲料水など一般的な生活条件 の調査が行いにくくなっている。結果、これらの分野で適切な手段を取ることが 困難になる。混乱の原因は、中央政府や自治体から提供される統計資料に見られ るばらつきにあることもある。従って統計資料の信頼性が問題である。

モニタリングもまた困難である。配給をモニタリングするスタッフの訪朝は認め られているが、行けるのは予定された地域に限られている。その上、モニタリン グの人数に対する朝鮮政府の独断やモニタリング自体の延期により、NGOの活 動が阻害されている。確かに、韓国のNGOのスタッフが毎年モニタリングのため 訪朝しているが、その頻度と期間を考えれば、儀礼的なものになっている。

効果に関する問題もある。人道支援事業による効果は疑わしいところがある。と いうのは、人道支援活動の立案、実行、評価に対して、政府機関が部分的に参加 する以外は、受益者が関わっていないからである。支援を受けることばかり気に かけて、朝鮮政府は活動の事後評価にほとんど関心を示さない。そのため、支 援機関によるフォローアップ計画の効果が薄れてしまう。

韓国のNGOの支援事業は、当初は計画性が無く、散発的で、組織化されていなかっ た。資金をめぐって多数のNGOの間で激しい競争があり、こうした資金が分散化 することで支援事業の効果が薄れてしまった。またNGOは秘密主義的で、互いに 情報を共有しようとはせず、それが其々のNGOが失敗する原因となった。更に、 組織間の協力が欠けていたために、事業の重複や人的・物的資源の無駄を招いた。 しかしながら、情報共有と相互協力には大きな前進があった。

今後の課題

長期に及ぶ国際社会による努力にもかかわらず、人道支援は現状の苦境を克服す るレベルには到底届いていない。理由の一つは国連や世界中のNGOによる食糧支 援事業のための資金集めが近年停滞していることにある。国際社会から集められ た寄付の総額のうち、70%はアメリカ・韓国・日本・中国など、支援の額が戦略 的・政治的利益に基づいて決められる国からきている。一方で、朝鮮政府がよ り現状の危機により積極的に取り組み、限られた資源の有効利用に力を入れない 限り、危機は続くだろう。

人道支援に関わる問題を解決するためには、いくつかの課題がある。第一に、現 在の朝鮮の危機は基本的に構造的欠陥からきており、その欠陥が食糧やエネル ギー、外貨準備高の不足につながっている。それでも政府は予算のほとんどを防 衛につぎ込んで、その対決的な政策を変えようとしない。この政策が国際社会で 聞かれる朝鮮への批判の主な要因であり、朝鮮に対するネガティブ=イメー ジを世界中で作り出している。また援助疲れにもつながっている。故に、朝鮮 の人々が直面している最も重要な課題は、自分たち自身で経済を復活させる努力 を始めることである。そういう方法を取らない限りは、慢性的な状況を改善させ ることはできないだろう。

第二に、朝鮮が自発的な努力を始めることを支えていくには、国際社会は支援 の範囲を広げる必要がある。緊急食糧支援に加え、持続可能な発展を助けるよう に支援を拡大しなければならないのである。国連は、自らの支援計画の構造調整 を行うことで、朝鮮の開発復興事業にもっと関わっていかなければならない。 韓国NGOや国際NGOも開発復興事業に焦点を移さなければならない。

第三に、国連機関や韓国NGO、国際NGOや発展途上国は、互いの協力や効果的な責 任分担を進めるため、情報共有をもっと行わなければならない。人的・物的資源 を無駄にせず最も望まれる結果を得るためには、これこそが優先事項である。国 連調整委員会や日韓米の三極調整監視グループ(TCOG)、国際NGO会議、韓国の民 間・政府間の政策立案会議を利用して、情報共有と相互協力を進め、できるだけ 早くより効果的な役割分担を進めなければならない。

第四に、人道支援は様々な分野で同時平行して行われなければならない。朝鮮 の人道危機は、全国にわたって続いており、特に食糧や健康、医療、環境、教育 の面で顕著である。従って限られた資源を様々な分野にバランスよく割り振らな ければならない。中でも保健と医療支援の量を増やさなければならない。

第五に、国連が堅持する人道主義の原則を朝鮮当局に伝えつづける必要がある。 朝鮮は韓国NGOや国際NGO、国連の要請に比較的応えるようになってきた。しか し政府の協力はまだ充分なレベルではない。正確な現状評価や監視されないモニ タリング、地域社会の援助、受益者の直接参加が、人道支援を効果的に活用する ためには欠かせない。最も急務なのは、何がなされるべきか、朝鮮当局に説得 することである。

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原注1:

この記事の初期の版は"Unified Economy" Hyundai Research Institute, September/October 2001 で発表されており、この記事はEast Asian Reviewの著者により更新されている。

訳注1:

この日本語文は、以下の記事の翻訳である。

Hong Yang-ho "Humanitarian Aid to North Korea:A Global Peace-Building Process", EAST ASIAN REVIEW, The Institute for East Asian Studies, Vol.13 No.4 (Winter 2000), pp. 21-40

訳注2:

著者略歴(http://www.ieas.or.kr/より)

現在は軽水炉事業政策調整局局長。また、朝鮮統一省の人道問題局局長を歴任。 ジョージア大学で文学修士、檀国大学で政治学博士を取得。主な著書に、 「ポ スト冷戦期における朝鮮の交渉様式」「国際機関の支援活動と朝鮮における 開放と変化」

訳注3:

この記事の日本語訳に関わる責任・権利は翻訳者にある。原文の著作権は設 定されている。日本語版の配布条件もこれに準ずることとする。