朝鮮民主主義人民共和国のための
2002年国連諸機関合同要請


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実施概要

朝鮮民主主義人民共和国人民(DPRK)の弱者集団は、長年にわたる栄養
失調と経済基盤の崩壊、不十分な食糧生産、そして劣悪な社会保障によ
る累積的影響により苦しみつづけている。人道的活動集団は、直接的介
入と基本的社会サービスの支援を通じて最も弱者とみなされる人々の
ニーズを満たすという課題に直面している。設定された人道的ニーズに
対応するため、総計US$ 258,136,111が要求されている。

人道的危機の主要な特徴は次の通り

・100万トン以上の食糧需給ギャップ。商業輸入や国内食糧生産の増加
によって政府が食料保障を達成するまでは、惜しみない食糧援助の提供
のみが深刻な飢餓を防ぐことができる。
・220万人の5歳以下の子供たち、特に2歳以下の子供たちは長年にわ
たる栄養失調と低い出生時体重、重い病気、貧弱な成長により、死に瀕
している。
・85万人の妊婦及び授乳中の母親は貧弱な栄養状態に苦しんでおり、
出産時の死亡率が増加している。
・400万人の学齢期児童は、学習能力の減退と劣悪な健康状態に直面し
ている。
・約2300万人の国民のほとんどが、不十分な食糧により脆弱な状態に
ある。基本的な保健、上下水道、および教育サービスの質の低下と利用
可能性の制約はこの脆弱性と結びついている。
・この国の経済が復興しなければ、この多面的な危機を克服することは
不可能である。

2001年6月、人道開発作業グループ(HDWG)は、DPRK政府と国際社会
に対し文書を発表し、国際社会の人道戦略とDPRKへの取組みを再検討
する必要を強調した。この文書の冒頭では、DPRK政府が人道支援から
開発への移行のための環境構築を支援するうえで、関係者が従うべきい
くつかの段階について述べている。人道活動のなかには移行的要素を含
んだプログラムがすでに導入されているものの、DPRKが直面する長年
の問題からの回復を始めることは開発を通じて可能なのである。共通の
移行戦略が実現するには時間がかかり、あらゆる関係者の関与が求めら
れる:DPRK政府と、それを支援するUNシステム、援助者集団、NGOそ
してその他の二国間援助者。同時に、移行過程の途上では、この国に対
する人道的支援の提供が求められる。

DPRKに対する合同要請の重点は、人道支援プログラムにある。しかし
復興および開発プログラムのために外部からの支援に対する緊急ニー
ズも存在する。そのような戦略の中心には、国連諸機関が政府のための
世話人として役割を果たすことを可能とする資源に対するニーズがあ
る。そのような変化を起こすため政府との対話を強化しなければならな
い。

諸機関合同要請は、国連諸機関、非政府組織(NGO)、国際赤十字赤新
月連盟(IFRC)および常駐する二国間援助機関からなるDPRK国内チー
ムによって作成された。もちろん常駐NGOだけでなくWFPの食糧援助リ
エゾンユニット(FALU)を通じて参加している非駐在NGOも、2002年
の共通人道的活動計画(CHAP)とそのプログラム作成を支援している。
7つのNGOが要請文書にプロジェクトを含めており,草の根レベルで活
動しているNGOが果たす重要な役割に寄付者の関心を喚起している。

 
表−1 2002年 朝鮮民主主義人民共和国に対する国連諸機関
    合同要請 総資金要求 (部門別および要請機関別)

  2002年1−12月

  部 門       要求額 (US$)
 食糧保障       232,717,047
 調整と支援サービス    962,064
 教育           530,250
 保健          19,156,750
 水道と下水       4,770,000
   計        258,136,111

 
  要 請 機 関           要求額(US$)
 食糧・農業機構/国連開発計画    16,344,646
 人道問題調整事務所(OCHA)       962,064
 国連開発計画(UNDP)         1,760,000
 国連人口基金(UNFPA)         1,002,000
 国連児童基金(UNICEF)        10,374,000
 世界食糧計画(WFP)         213,605,401
 世界保健機構(WHO)          7,242,000
 CHILDREN'S AID DIRECT        1,866,000
 COOPERAZIONE E SVILUPPO       1,150,000
 カナディアン穀物銀行          650,000
 CONCERN WORLDWIDE          1,300,000
 GERMAN AGRO ACTION           260,000
 HANDICAP INTERNATIONAL BELGIUM     570,000
 TRIANGLE GENERATION HUMANITAIRE   1,050,000
    計              258,136,111

 
2001年の回顧

財政面の回顧

2000年11月、諸機関合同要請ではDPRKにおける問題に有効に対処す
るため、寄付者集団に対し3億8300万US$の資金要求を提示した。2001
年5月の中間評価では、資金提供が不均等であり、食糧以外の部門(農
業、保健、水道と下水、および教育)では支援が少ないことが示された。
2001年10月29日の時点で2億2700万US$(総要求額の59%)が国際
社会から提供または確約されているが、その内食糧援助プログラム以外
に対するものはわずか3%であった。

食糧援助プログラム以外では十分な資金提供が得られなかったことは、
国連機関やNGOが、社会サービス部門で弱者集団の人道ニーズを満たす
能力を制限した。同様のことは、緊急援助から開発計画への移行を支援
するよう計画されたプログラムを担当する国連機関についても該当す
る。UNDP、UNICEF、UNFPA、WHOなどでは、基本的保健、水道と下水サ
ービスの続行に対して支援能力が制約される。

不均等な資金提供は人道支援プログラムの全体的有効性の観点からは
憂慮すべきことである。確かに食糧支援の提供は栄養失調を減らすもの
の、他の部門における資金不足は伝染病、疾患など防ぐことができるは
ずの死のリスクを高め、食糧支援の効果をいくらか打ち消すことになる。
共通人道的活動計画は緊急対策とともに、脆弱性の直接的原因に対処す
るプログラムを組み合わせたものである。不均等性の影響はすぐには見
えてこないかもしれないが、復興的プログラムに対する支援がないまま
だと、長期的には支援の必要性をむしろ増加させることになると思われ
る。付録Iには2001年の合同要請に対する寄付者の反応が詳細に示さ
れている。

人道状況の変化

2000年6月の首脳会談以降の18ヶ月に、DPRKと他の国々特にヨーロ
ッパ連合加盟国との外交関係の樹立が強化された。しかしDPRKと大韓
民国との対話は当初期待したほどには進展しなかった。国際社会と
DPRK政府との対話が増大したものの、1996年以来の人道的状況はむし
ろ悪化し続けている。南北会談の直後に形成された楽観的見通しは現在、
消失している。国内でほとんど変化が起きてないことと、関連主体が重
要な問題について前進させる能力を持たないこととがあいまって、国民
は今後しばらく同様の苦しみに直面することになりそうである。

2001年に、政府は一人あたり国民所得が1998年の457US$以下に減少し
たことを報告した。このことは、国内総生産が1993年から1996年の間
に50%減少して一人あたり所得が481US$になったとした、2000年の政
府発表による数字よりも経済が縮小したことを意味する。限られた資料
ではあるが、経済は10年以上マイナス成長してきたことを示している。
2001年5月に韓国の韓国銀行は、DPRKの経済が1999年に6.2%成長し
た後、2000年は1.3%成長したと報告した。伝えられるところでは、建
設および鉱業部門での持続的生産によるものだそうである。さらには韓
国税関の報告によると南北朝鮮間貿易は年28%拡大し2000年には4億
2510万US$になった。DPRKにおける合弁に関する論議が増加している
ことを考慮すると、南北朝鮮間の貿易はさらに成長する可能性がある。
これらにはサムソンによる加工生産と電子産業複合体、韓国タバコによ
るタバコ加工、人参会社とノクシップチャ(緑十字)による薬品生産な
どが含まれる。

これらはたしかに好ましい展開であるが、広範な国民が便益を享受する
までには長期間にわたって経済の改善をともなった持続的経済成長が
必要である。社会主義圏の崩壊により生じた経済面の困難は、現在も依
然として人道的状況に直接的影響を及ぼしている。操業率の低下は生産
性の低下をもたらし、社会サービス供給水準の持続的悪化の原因になっ
ている。これにより子供たち、妊婦および授乳中の女性、高齢者、そし
て身体および精神に障害を持つ人々のような、弱者たちの生活条件が悪
化している。国民の平均寿命は2001年の政府発表によると66.8年であ
り、これは1993年から6.4年減少している。

国際社会からの人道援助は数百万の人々の基本的ニーズを満たすため
に大きく貢献してきた。しかし基本的社会サービスをはじめ、明らかに
状況は悪化している。

戦略的目標に対する達成度

2001年におけるDPRKに対する緊急および構造的問題に対処するための
人道的活動の目標は以下の通り:

・目標1 − 2/3年。  あらゆるレベルでの関与を通じてDPRKが自
国民に十分な食糧、保健、水道および下水、そして初等幼児教育を与え
る能力を強化する。

・目標2 − 1年。  直接的人道活動と設定された部門における基
本的サービスの提供を通じて、最も脆弱な人々のニーズを最大限に満た
すこと。

・目標3 − 3年。  社会基盤の問題に関わる復興や長期的開発プ
ログラムについて人道集団は十分な能力を持たないので、復興と開発に
関わるパートナーや関連省庁など政府機関と協力して取組むこと。

・目標4 − 1年。  CHAP(共通人道的活動計画)の計画、実施、
モニタリングおよび評価において、分野横断的な問題(ジェンダーなど)
に対し総合的な取り扱いがなされることを保証する。

これらの目標に対し、いくつかの重要な進歩がみられた。それは以下の
ことによって示される。

・世界食糧計画(WFP)は、引き続き最も脆弱な集団に対する支援を行っ
た。2001年に受給者の数は760万人であった。2001年1月から9月ま
で807,327トンの食糧が配給された。WFPの主たる受給者に加え、200
万人の人々が、収穫のない時期に食糧支援を受けた

・保健省、UNICEFおよびWHOの結集により、2001年にいくつかの目立
った進歩が見られた。

  2001年末までにポリオ撲滅が達成される見込みである
  マラリア予防と対策が7道の115郡をカバーするほどまで拡大した。
40の診療所でマラリア治療の設備が備えられ、40000のベッド・ネット
が配られた。
  DPRKの98%の地域をカバーして6ヶ月から5歳までの子供を対象と
したビタミンAデーが2度催された。
  ヨード塩の生産が7箇所で増加し、今年は15000トンが生産された。
  一般的な病気に対する6種類の基本的薬品の現地生産が行われる
ようになった
  1歳未満の幼児に対する6種すべての抗原、および妊婦に対する破
傷風について国民的免疫プログラムが再構築された。保健省の公式数字
によると、2000年に次のような普及率が達成された。
    BCG 85%,
    ジフテリア/百日咳/破傷風混合 84%,
    ポリオ3 90.6%,
    はしか 91.5%,
    破傷風 85.6% (妊婦に対する)

・2001年8月23日にWHOはピョンヤンに常設事務所を開き、代表部を
設置した。WHOは1997年からDPRKに技術支援や援助を行なってきたが、
常設事務所の開設は、政府が技術的問題について国連機関と協力して取
組む意向を示すものである。

・2001年3月、免疫に関する政府―WHO−UNICEFの技術作業グループが
設立された。これは関連省庁と国連機関の間の技術協力増大を示す証拠
である。

・WFPのFFW(労働に対する食糧)プログラムは農業部門における多く
のプロジェクトを支援したが、これらは農地の生産を高めたり環境を保
護するなど、長期的な効果を及ぼすものである。これらの活動とは、堤
防の建設、河川流の掘削、農地の開墾、植林、塩田、養殖池などである。
2001年1月から9月までの間に101,244トンの食糧を供給して、総計
207のプロジェクトが実施された。プロジェクト実施期間は、主たる農
業活動と重複しないよう注意して計画された。

・AREP(農業復興環境保護プログラム)の枠組み、およびEUが資金を
提供するNGOの農業プログラムを通じて、UNDP(国連開発計画)とFAO
(食糧農業機構)は国営および協同農場に農機具を提供したが、このこ
とは植林によって限界地を復旧するのに貢献した。これにより食糧生産
は促進され、耕地の侵食を減少させた。

・ハンディキャップインターナショナルは、ECの人道事務所の支援を
受けて、2001年3月から国内に駐在を始めた。朝鮮障害者支援協会の
パートナーとしてハンディキャップインターナショナルは身体障害者
のための活動現場を支援している。国際社会が身体障害者に焦点をあて
て支援を行なうことは初めてのことである。

・UNFPA(国連人口基金)は技術指導、設備、避妊器具の提供を通じて
生殖医療に対する支援を継続している。これにより国際標準を満たすよ
う改善する方向で生殖医療指針の評価と改訂がもたらされた。公衆保健
省は新しい指針を採用した。

・UNDPは多くの開発指向的活動において政府と協力して取組んだ。こ
れらの内訳は訓練や能力開発への支援、環境管理、産業による汚染の削
減、経済運営の研修などである。

・都市管理省はUNICEFの支援を受けて政府主導の水道と環境部門の調
整会議を発足させた。政府が部門間調整活動に取組むのは初めてのこと
である。

・2001年6月に、人道的開発作業グループは、付録IIIのような、復
興と開発に関してDPRK政府、寄付者およびNGOに情報を提供するため
の文書を作成した。この文書は、いかにして現在の緊急対策から復興と
開発への移行を図るかに関する議論を促進した。

上述のような好ましい兆候にもかかわらず、人道社会はDPRKのインフ
ラストラクチャ問題に関する長期的な戦略的目標を達成する上で、次の
ような制約に直面している。

・保健部門における深刻な資金不足
- 2001年に、5歳以下の子供たちの2/3以上が、急性呼吸器疾患(肺
炎)に悩まされており、基本的薬品の不足によって治療ができていなか
った。
- 病院や保育施設に収容された栄養失調児童の半数以上が、食糧以外の
資材不足により治療されていない。
- 2001年に1歳未満の子供たちのおよそ1/3が基本的な6種のワク
チンによる免疫注射を受けていない。

・移動産婦人科サービスに対する援助がなかったので、遠隔の山間地に
おける女性たちが良質の生殖医療を受けることを妨げている。

・政府によると、特に被災地域や山間地において2001年に学校への出
席率が不安定であった。さらに冬季間の暖房や電力の不足は出席率を低
下させた。教育部門に対する寄付者の支援不足は、この国の人的資源に
対して長期的に悪影響を及ぼす。この問題は子供たちの学習能力を阻害
する、慢性的な栄養失調によって増幅させられている。WFPの食糧支援
は栄養失調を回避する上で決定的に重要であり、出席率を維持する役割
も果たす。

・水道システムは劣化しており、二次汚染や水に起因する病気を増加さ
せている。このことは数百万の人々に下痢性の疾患に罹らせる危険をも
たらし、食糧援助の有効性を減少させている。国連機関やNGOの努力は、
相当なものであるが、緊急な要求水準を満たすには限界がある。水道シ
ステムを整備するには、人道団体の能力をはるかに上回る投資が必要で
ある。

・WFPの特別活動に対する資金提供が計画を大幅に下回った。930万
US$の必要額に対し、たったの1件、21.9万US$のみが確定している(2001
年9月14日現在)。この特別活動は、子供たちのための混合食品の現
地生産、港湾施設のための基本的部品、そしてFFWのための非食糧資材
への支援を対象とするものである。

 
得られた教訓

2001年合同要請では、全般的な人道戦略が「復興と開発活動への関与
を増大させつつ、継続的人道的ニーズに対応すること」であると要約さ
れている。そして「DPRKが直面する問題は中長期的に経済の回復に向
けた取組みによってのみ解決される」と述べている。人道開発作業グル
ープ(HDWG)は、この立場がこの緊急事態の複合的原因に対処する唯一
の実行可能な方法であると考えている。援助者らは、復興と開発活動に
関与する以前にDPRK政府との対話を改善することを求めていた。これ
により、復興と開発活動に対する支援が最小限にとどまっていたのであ
る。

HDWGは、人道支援から開発プログラムへの移行を可能とする環境が形
成されないと、今後もDPRKが同様の人道問題に直面しつづけることに
なるだろうと確信している。DPRK政府が緊急対策の段階を脱却しよう
と試みていることは認められる。開発に向けた取組みの例としては、
2001年8月にSDC(スイス開発協力庁)がUNDPと共同で、開発協力の
ための能力開発を支援する調査団を派遣したことである。

2002年にHDWGは、緊急支援から開発指向プログラムへの移行を促すた
め、下記のような活動を計画している:

・人道支援プログラムを継続し、合意された評価手法を通じて最も脆弱
な人々に届くようにする。

・援助者が復興と開発プログラムに関して政府に対し要求することを、
政府に理解させ、彼らの要求を満たせるような支援を行なう。

・開発支援に携わろうとする国内の国際機関やNGOに対し、政府がよえ
い開放的に取り扱うよう、政府に提唱する。

・UNDPや援助者の支援を受けつつ、政府が主導する調整機構の構築を
推進する。これらの機構は包括的であり、部門別会合、審議会、そして
関連省庁や国際機関を含む公開の議論などを伴っている。

・HDWGは実施中の復興・開発活動に関する情報の普及を促進する。こ
のためにOCHA広報は人道と復興プログラムについて別々の項目を設け
て紹介する。より広範な国際社会が、人道、復興と開発状況について認
識できるよう、OCHAは人道調整情報センターの設立を提案している。

・援助供与国がDPRKの復興・開発に関与する際に要求することを明確
に述べることを推奨する。HDWGは援助国と機関が政策レベルの協議を
行ない、DPRKとの交流を前進させる方法を決めるようにすることを提
唱する。

・この国のニーズを明らかにするため、報道機関のDPRK訪問を推奨す
る。

・12ヶ月サイクルで達成可能な、現実的な人道目的を設定し、可能な
限り、長期的開発目的と関連させる。

ポリオ撲滅、ビタミンA錠剤プログラムなど、成果を収めた多くのプロ
グラムにはいくつかの共通点がある。それらは、水害復旧委員会(FDRC)
の支援を受けた関連省庁の参加と実施、合意にもとづく政策枠組み、政
府からの政治的支持、援助者からの資金、そして強力な機関間協力、な
どである。HDWGはこれらの要素を2002年のすべてのプログラムに導入
することをめざす。